あなたが日本国内でどこかに旅行して、道で出会った人に「なんとか記念館はこっちですか」と聞いたとします。で、その人が「はい」と答えたとします。でも実はその人は日本語を勉強中の外国人で、「記念館」という言葉をまだ知らなくて、「動物園」のことじゃないかと思って、悪気はないのだけど間違った情報をあなたに与えてしまったとします。そしてそのために、あなたは記念館に行くのが遅くなって、ゆっくり見ることができなかったとします。
あなたはきっと、腹を立てますよね。日本語がよくわからないなら、そう言ってくれればいいのにって。返事をしたら、こっちの言ってることが理解できてると思うじゃないかって。
でもこの外国人と同じことを、日本人が海外でやらかしてしまうことがあります。
あるハワイ在住日本人女性の話。市民権の申請書面の中に「これまでに何回結婚しましたか」という質問がありました。その女性は日本で1回、アメリカで1回、合計2回の結婚歴があったのですが、日本での結婚歴を聞いているのだと思って、1と記入。ところがそれが事実ではないことが審査官に判明。
審査官としては「この人は嘘をつき事実を隠そうとしたのでは?」と疑わないといけません。女性は「いいえ、嘘をつくつもりではありませんでした。間違えたのです」と釈明のレターを書かなければならなくなりました。その釈明を受け入れてもらえるかどうかは審査官次第。結果的にはだいじょうぶでしたが、その通知が来るまでは、もしかしたら市民権はダメかもしれない、とずいぶん気を揉まれました。
入国や市民権などに関しては、うっかり間違った返事をしてしまうと、挽回が大変だったり、場合によっては取り返しのつかない事態を招くことがあります。質問の意味がはっきりしているかどうか、あわてないで慎重に考えて返事をしましょう。
はっきりわからない場合や自信がない場合は、「質問がよくわかりません」 (アイ・ドント・アンダースタンド )とか I am not sure if I understand the question などと言いましょう。また「ジャパニーズ、プリーズ」と日本語がわかる人がいないか聞いてみましょう。
あるいは、「日本での結婚回数ですか? それとも日本とアメリカと合わせてですか?」というように疑問点を聞き返して、質問の意味をはっきりさせましょう。
日本人は「わからない」と言ったり、聞き返したりすることが相手に失礼な気がして遠慮しがちですが、全然そんなことはないのです。逆に、「質問の意味がわからないのにテキトーに答えるなんて、不誠実じゃない?」と受け取られる可能性だってあるのです。